
【 明日君スピンアウト―舞誕生日企画SS 】
『記念日に祝福を』
「つ、疲れた……」
仕事が終わると、シュージはぐったりと机に突っ伏した。
あたしはそんなシュージを見ながらため息をつく。
「はぁ、このぐらいで根を上げるだなんてだらしないわねー」
確かにいつもよりお客の数は多かったけど、あたしにはまだまだ余裕がある。
「それに今日はあまり仕事に集中してなかったみたいだし」
「うっ、ごめん……」
そこはシュージも反省しているのか、素直に謝ってきた。
原因は今日があたしの誕生日だからだとわかっているので、
あたしもあまり強くは言えず、その話はそこで終わりにした。
そうこうしていると、ふいに親父殿が休憩室に入って来た。
「あれ? どうしたの、親父殿?」
親父殿が休憩室に顔を出すのは珍しいことだ。
シュージも慌てて椅子から立ち上がり姿勢を正す。
「いやなに、今日はおまえの誕生日だからな。
帰る前にこれを渡しておこうと思ったんだ」
「これって小龍包?」
蓋を開けなくとも、匂いでわかった。
親父殿がわざわざ作ってくれたことを思うと、嬉しさが込み上げる。
しかも、ちゃんとあたしとシュージの二人分だ。
「親父殿ありがとう!」
あたしは思わず親父殿に抱き着いていた。
「おいおい、そういうことは愛しの彼氏にしてやんな」
「も、もう! 親父殿っ!」
あたしは耳まで真っ赤になって叫んだ。
「ははははっ、今更照れることもないだろう」
「乙女心は繊細なの!」
まったく、困った親父殿だ……。
「ほら、あまり遅くならないうちに帰れよ」
「はーい。それじゃ、あたし着替えてくるわね」
「わかった、俺もすぐに着替えてくるよ」
「ええ、また後でね。親父殿、これ本当にありがと」
「ああ。帰り道、気をつけてな」
「うん、わかってる」
そんなやり取りをして親父殿が休憩室を出て行くのを見送ってから、
あたしは更衣室へと入って行った。
・
・
・
家に帰り、あたしとシュージは親父殿からもらった小龍包を食べながら話に花を咲かす。
こうして二人きりで過ごす時間が、一日で一番好きな時間だ。
この家で二人で暮らすようになってから、もうずいぶんと経つ。
家の中には少しずつおそろいの日用品が増えていき、あたしはそれらを見る度に、
胸の奥がふわりと温かな気持ちに包まれるのだった。
幸せであればあるほど時の流れは早いもので、
今年も早くもあたしの誕生日がやってきた。
小龍包を食べ終わり、買ってきたケーキにロウソクを立てていく。
「なんか二十歳を超えると誕生日って嬉しくないわね……」
「どうしてだ?」
「月日の流れを意識しちゃって、なんか切なくなるのよね……」
「あー、なんとなくわかるかも。正月とかもそんな感じになるよな」
「そうそう。一年ってほんと早いわよね……」
時の流れはいつだって残酷だ。
止まってほしいと願っても、戻ってほしいと願っても、決して叶うことはない。
「でも、その分密度のある一年にすればいいんじゃないか?」
「それはそうかもしれないけど……」
「少なくとも、俺は舞と付き合うようになってから、
毎年充実した一年を送れてるぞ?」
立て終わったロウソクに火をつけつつ、シュージは笑顔で言った。
「そ、そうなんだ……」
そんなことを面と向かって言われると恥ずかしい。
でも、それはあたしもシュージと同じ気持ちだった。
「よし、準備できたぞ」
見ると、合計21本のロウソクに全てに火が灯っていた。
これからまた新しい一年が始まるのだと思うと、少しだけ不安が生まれる。
「電気消すか?」
「ううん、つけたままでいいわ」
「それじゃ、どうぞ」
「うん……」
あたしは大きく息を吸い込むと、全ての灯かりを一息に吹き消した。
「舞、誕生日おめでとう」
「ありがとう、シュージ」
なんだかんだ言っても、やっぱりこの瞬間は笑顔が浮かんだ。
今年はどんな一年になるのだろう……?
そんなことを考えていると、シュージが小さな箱を取り出して手渡してきた。
「これは?」
「誕生日プレゼント」
「開けてもいい?」
「もちろん」
あたしは包みを開いて、出てきた箱の蓋を開けた――
「舞、結婚しよう」
「…………け、結婚っ!?」
箱の中に入っていたのは指輪だった。
それを見てもなお、シュージの言葉を理解するのに数秒の時間を要した。
「ちょ、ちょっと本気なの!?」
「当たり前だろ。冗談でこんなこと言わないって」
「で、でも結婚って、あの……えっと……」
いきなりのことだったので、あたしは柄にもなく慌ててしまう。
「駄目ならそう言ってくれてもいいけど……」
「だ、駄目なわけないじゃない! って、あ……」
しまった!と思ってももう遅い。
あたしは反射的に承諾の言葉を発してしまっていた。
「あの……その……そういうわけだから」
「結婚してくれるか?」
「……はい」
あたしは真っ赤になって頷いた――
・
・
・
衝撃の告白からおよそ一時間後。
あたしとシュージはベットの上で寄り添いながら語り合っていた。
「ねぇ、シュージ」
「ん? なんだ?」
「あたしたちが結婚したら、彼女は喜んでくれるかしら?」
「彼女って、明日香のことか?」
「うん……」
若宮明日香――
それはシュージにとっても、あたしにとっても大切な人の名前だ。
彼女のことを考えなかった日は一日だってない。
「大丈夫だよ。明日香ならきっと喜んでくれるさ」
「そ、そうかな……」
「ああ。それどころか、式の当日あたりにひょっこり帰ってくるかもしれないし」
「あはははは。そうね……うん、そうだといいな」
今回のことを明日香さんに報告したくても、今はできない。
そのことが少しだけ淋しいと思う。
だからこそ、もう一度明日香さんに逢いたい。
そして、今度はちゃんとあたしの気持ちを伝えたい。
きっと今なら、色々なことがわかり合えると思うから。
「さ、そろそろ寝ようか」
「うん。おやすみ、シュージ」
「おやすみ、舞」
・
・
・
その日、あたしは夢を見た。
小さな花束を持った彼女は、無邪気な笑顔を浮かべていて。
『おめでとう、舞ちゃん!』
そう言って祝福してくれたのだった――
おわり
以下、あとがき。
「つ、疲れた……」
仕事が終わると、シュージはぐったりと机に突っ伏した。
あたしはそんなシュージを見ながらため息をつく。
「はぁ、このぐらいで根を上げるだなんてだらしないわねー」
確かにいつもよりお客の数は多かったけど、あたしにはまだまだ余裕がある。
「それに今日はあまり仕事に集中してなかったみたいだし」
「うっ、ごめん……」
そこはシュージも反省しているのか、素直に謝ってきた。
原因は今日があたしの誕生日だからだとわかっているので、
あたしもあまり強くは言えず、その話はそこで終わりにした。
そうこうしていると、ふいに親父殿が休憩室に入って来た。
「あれ? どうしたの、親父殿?」
親父殿が休憩室に顔を出すのは珍しいことだ。
シュージも慌てて椅子から立ち上がり姿勢を正す。
「いやなに、今日はおまえの誕生日だからな。
帰る前にこれを渡しておこうと思ったんだ」
「これって小龍包?」
蓋を開けなくとも、匂いでわかった。
親父殿がわざわざ作ってくれたことを思うと、嬉しさが込み上げる。
しかも、ちゃんとあたしとシュージの二人分だ。
「親父殿ありがとう!」
あたしは思わず親父殿に抱き着いていた。
「おいおい、そういうことは愛しの彼氏にしてやんな」
「も、もう! 親父殿っ!」
あたしは耳まで真っ赤になって叫んだ。
「ははははっ、今更照れることもないだろう」
「乙女心は繊細なの!」
まったく、困った親父殿だ……。
「ほら、あまり遅くならないうちに帰れよ」
「はーい。それじゃ、あたし着替えてくるわね」
「わかった、俺もすぐに着替えてくるよ」
「ええ、また後でね。親父殿、これ本当にありがと」
「ああ。帰り道、気をつけてな」
「うん、わかってる」
そんなやり取りをして親父殿が休憩室を出て行くのを見送ってから、
あたしは更衣室へと入って行った。
・
・
・
家に帰り、あたしとシュージは親父殿からもらった小龍包を食べながら話に花を咲かす。
こうして二人きりで過ごす時間が、一日で一番好きな時間だ。
この家で二人で暮らすようになってから、もうずいぶんと経つ。
家の中には少しずつおそろいの日用品が増えていき、あたしはそれらを見る度に、
胸の奥がふわりと温かな気持ちに包まれるのだった。
幸せであればあるほど時の流れは早いもので、
今年も早くもあたしの誕生日がやってきた。
小龍包を食べ終わり、買ってきたケーキにロウソクを立てていく。
「なんか二十歳を超えると誕生日って嬉しくないわね……」
「どうしてだ?」
「月日の流れを意識しちゃって、なんか切なくなるのよね……」
「あー、なんとなくわかるかも。正月とかもそんな感じになるよな」
「そうそう。一年ってほんと早いわよね……」
時の流れはいつだって残酷だ。
止まってほしいと願っても、戻ってほしいと願っても、決して叶うことはない。
「でも、その分密度のある一年にすればいいんじゃないか?」
「それはそうかもしれないけど……」
「少なくとも、俺は舞と付き合うようになってから、
毎年充実した一年を送れてるぞ?」
立て終わったロウソクに火をつけつつ、シュージは笑顔で言った。
「そ、そうなんだ……」
そんなことを面と向かって言われると恥ずかしい。
でも、それはあたしもシュージと同じ気持ちだった。
「よし、準備できたぞ」
見ると、合計21本のロウソクに全てに火が灯っていた。
これからまた新しい一年が始まるのだと思うと、少しだけ不安が生まれる。
「電気消すか?」
「ううん、つけたままでいいわ」
「それじゃ、どうぞ」
「うん……」
あたしは大きく息を吸い込むと、全ての灯かりを一息に吹き消した。
「舞、誕生日おめでとう」
「ありがとう、シュージ」
なんだかんだ言っても、やっぱりこの瞬間は笑顔が浮かんだ。
今年はどんな一年になるのだろう……?
そんなことを考えていると、シュージが小さな箱を取り出して手渡してきた。
「これは?」
「誕生日プレゼント」
「開けてもいい?」
「もちろん」
あたしは包みを開いて、出てきた箱の蓋を開けた――
「舞、結婚しよう」
「…………け、結婚っ!?」
箱の中に入っていたのは指輪だった。
それを見てもなお、シュージの言葉を理解するのに数秒の時間を要した。
「ちょ、ちょっと本気なの!?」
「当たり前だろ。冗談でこんなこと言わないって」
「で、でも結婚って、あの……えっと……」
いきなりのことだったので、あたしは柄にもなく慌ててしまう。
「駄目ならそう言ってくれてもいいけど……」
「だ、駄目なわけないじゃない! って、あ……」
しまった!と思ってももう遅い。
あたしは反射的に承諾の言葉を発してしまっていた。
「あの……その……そういうわけだから」
「結婚してくれるか?」
「……はい」
あたしは真っ赤になって頷いた――
・
・
・
衝撃の告白からおよそ一時間後。
あたしとシュージはベットの上で寄り添いながら語り合っていた。
「ねぇ、シュージ」
「ん? なんだ?」
「あたしたちが結婚したら、彼女は喜んでくれるかしら?」
「彼女って、明日香のことか?」
「うん……」
若宮明日香――
それはシュージにとっても、あたしにとっても大切な人の名前だ。
彼女のことを考えなかった日は一日だってない。
「大丈夫だよ。明日香ならきっと喜んでくれるさ」
「そ、そうかな……」
「ああ。それどころか、式の当日あたりにひょっこり帰ってくるかもしれないし」
「あはははは。そうね……うん、そうだといいな」
今回のことを明日香さんに報告したくても、今はできない。
そのことが少しだけ淋しいと思う。
だからこそ、もう一度明日香さんに逢いたい。
そして、今度はちゃんとあたしの気持ちを伝えたい。
きっと今なら、色々なことがわかり合えると思うから。
「さ、そろそろ寝ようか」
「うん。おやすみ、シュージ」
「おやすみ、舞」
・
・
・
その日、あたしは夢を見た。
小さな花束を持った彼女は、無邪気な笑顔を浮かべていて。
『おめでとう、舞ちゃん!』
そう言って祝福してくれたのだった――
おわり
以下、あとがき。
『しっとりとしたLove』を目指したのだけど、
んー、なんだかテンプレ的な内容になったかなーと。
こういうの鏡遊さんならもっと上手いのに、私はまだまだだなぁ……。
個人的には、読み手の脳内で場面ごとに明日君BGMが再生されたら成功かな(笑)。
とりあえず、基本の起承転結はできたつもり。
私自身の評価は75点ぐらいです(苦笑)。
なお、毎度のことになりますが、
携帯からの投稿のため、誤字脱字その他もろもろ、
確認と手直しが困難なため、そこは見逃してください。
そんなこんなで、舞誕生日企画作品でした。
貴重なお時間を私の作品を読むことに使っていただき、
誠にありがとうございました。
それではまた、ごきげんよう!
んー、なんだかテンプレ的な内容になったかなーと。
こういうの鏡遊さんならもっと上手いのに、私はまだまだだなぁ……。
個人的には、読み手の脳内で場面ごとに明日君BGMが再生されたら成功かな(笑)。
とりあえず、基本の起承転結はできたつもり。
私自身の評価は75点ぐらいです(苦笑)。
なお、毎度のことになりますが、
携帯からの投稿のため、誤字脱字その他もろもろ、
確認と手直しが困難なため、そこは見逃してください。
そんなこんなで、舞誕生日企画作品でした。
貴重なお時間を私の作品を読むことに使っていただき、
誠にありがとうございました。
それではまた、ごきげんよう!
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